パソコン選びでは必ずといっていいほど見かける単語のCPU。それだけ、重要なPCパーツだといえます。
しかし初心者やゲーマーにとってCPU選びはとても難しく、勧められるがままにあまり考えずに購入して失敗するケースが多発しています。
この記事では、現役ITエンジニアの筆者が、CPUとは一体どういったものなのか、どんなCPUを選べばいいか、徹底的に解説しています。対象は主に次のような人です。
- ゲーミングPCを買いたい初心者〜中級者
- プログラミングなどに十分な性能のCPUを知りたいエンジニア
- イラスト制作、動画編集などが快適にできるCPUのスペックを知りたいクリエイター
初心者でも分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
CPU選びの結論
便利のために、本記事で解説している内容をまとめました。ブックマークはこちらのURL推奨です!
- CPUはパソコンの基本性能を決定する、一番重要なパーツ
- ゲーミングPCなら、最低でもCore i5, Ryzen 5以上から選ぼう
- プログラミングの勉強なら最低でもCore i3、業務向けならCore i5-12400以上が推奨
- クリエイター向けのPCにはCore i7-12700やRyzen 7 5800X以上が選択肢
- コア数/スレッド数は並列処理の能力、動画編集などに重要
CPUとは何か?製品の見分け方
CPUの役割
CPUは人間の体に例えると「頭脳」にあたり、パソコンを動かすのに無くてはならないパーツです。
CPU(Central Processing Unit)は、日本語では「中央演算処理装置」となります。その名のとおり、パソコンの中では中心的な役割のパーツで、各種の計算をしたり、他のパーツとデータのやり取りをします。
高い性能のCPUになるほど、グラフィックボード(GPU)やSSDなどの性能を十分に引き出せるようになります。そのため、CPUの性能はパソコン全体の性能を決める、といえるのです。
CPUのメーカーとブランド
CPUには多くの種類がありますが、CPUを作っている会社は大きく2社しかありません。
Intel社とAMD社です。
Intel社のCPUブランド「Core」の方が、AMD社の「Ryzen」ブランドよりもシェアが大きく、実際に搭載しているPCの数も多いです。近年は、両社が激しい性能競争をしていて、非常に早いスピードで性能が向上してきていました。数年前まではAMDの方がコストパフォーマンスが高いという時代があり、現在ではIntelの方がコストパフォーマンスが優れています。このように、単純に価格面だけを比較すると、その時代によって選び方が違うということになります。
左からIntel、AMDのロゴ
とはいえ、特にこだわりがなければ、どちらのメーカーのCPUを選んでも問題ありません。後で紹介するCPU性能一覧表を見て、同じくらいのスペックであれば、IntelでもAMDでもパフォーマンスに大きな差はありません(もちろん、マルチスレッド性能、消費電力などの違いはあります)。
なお、ゲームタイトルによっては、Intel製CPUに最適化をしていることがあります。ゲーマーなら、まずはIntel CoreファミリーのCPUから選ぶのもおすすめです。
型番の見方
メーカー
CPUを製造・販売しているメーカー名を表します。販売サイトによってはメーカー名を省略して記載していることもあります。
現在販売されているゲーミングPCのほぼ全てがIntel(インテル)、もしくはAMD(エーエムディ)のCPUを搭載しています。
ブランド
CPUのブランド名を表します。ゲーミングPCなら、現在流通しているブランドは、IntelならCore、AMDならRyzenがほとんどです。
サブブランド(グレード)
サブブランドの部分は、そのCPUのグレード、つまり性能の区分を表します。基本的に以下のような分け方になっています。
Intel | AMD | グレード |
---|---|---|
i3 | 3 | ローエンド |
i5 | 5 | ミドルエンド |
i7 | 7 | ハイエンド |
i9 | 9 | トップパフォーマンス |
なお、ノートPC向けのCPUも同じ区分が使われていますが、同じグレードでもデスクトップとノートでは性能が大きく違うので覚えておきましょう。
プロセッサナンバー(狭義の型番)
Intelなら「12700」など、AMDなら「5800」などの部分はプロセッサナンバーと呼ばれる型番。
基本的に、数字が大きいほど性能が高いと考えて大丈夫です。
また、プロセッサナンバーの頭1桁また2桁の数字はCPUの世代を表します。
例えば、Intel Core i7シリーズなら、次のように見分けられます。
- Intel Core i7-12700K:第12世代
- Intel Core i7-11700K:第11世代
- Intel Core i7-10700K:第10世代
製品カテゴリー
Core i7-12700K、Ryzen 7 5800Xの末尾にあるKやXといった文字はCPUの製品カテゴリーを表しています。簡単に言えば、CPUの特徴や用途を表しています。
現在流通しているCPUの主な製品カテゴリーのリストです。
Intel
- 末尾文字無し:通常モデル
- K:オーバークロック対応モデル
- F:内蔵グラフィックス非搭載モデル(グラフィックボードが必須)
- KF:オーバークロック対応、かつ内蔵グラフィックス非搭載
- X:オーバークロック対応、かつ最上位のエクストリームな性能
- H:ハイパフォーマンスモデル(主にノートPC向け)
- HK:ハイパフォーマンスモデル、かつオーバークロック対応(主にノートPC向け)
- U:省電力のモバイル向けモデル
AMD
- 末尾文字無し:通常モデル
- X:高性能モデル
- G:内蔵グラフィックス搭載モデル
CPU性能を確認しよう
上で解説したように、CPUの型番のうち、プロセッサナンバーが大きい数字の方が性能も高いという考え方で大体問題ありません。
ただし、サブブランド間で比較したときに、必ずしもi5よりもi7の方が性能が高いとは限らない点に注意しましょう。なぜなら、世代(第12世代、第11世代など)が新しいi5の方が、古いi7よりも性能が上、ということがよくあるからです。
このように、初心者のうちは、CPUのモデル情報や型番を見ただけでは性能を比較するのが難しいかと思います。そんなときは、CPUの型番とパフォーマンス(性能)のリストを使って比較するのをおすすめしています。
CPU性能一覧表
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CPUの用途別おすすめモデル
ゲームや動画編集、プログラミングなど、用途ごとにCPUに必要な性能が変わってきます。以下では、用途別におすすめのCPUの選び方について解説します。
ゲーム用パソコンにおすすめのCPUの選び方
ゲーミング向けのパソコンなら、CPUはIntelならCore i5以上、AMDならRyzen 5以上のスペックがあると安心です。
ゲーミングPCというと、グラフィックス(GPU)の性能ばかり気にしがちですが、同じくらいCPUの性能も重要です。CPUのスペックが高いほど、GPUの性能を引き出してフレームレートを高くするのに役立ち、ラグが小さく、処理落ちの少ないゲーム環境をつくれます。
そのため、バトロワやFPS、3DのRPGなどをプレイするゲーマーなら、ミドルレンジクラスであるIntel Core i5、またはRyzen 5以上のスペックを基準に選ぶとよいでしょう。もし、2Dのゲームやブラウザゲームが中心のゲーマーならCore i3でも十分です。
なお、各タイトル公式での推奨CPUは以下のようになっています。こちらも参考にしてみるのもよいでしょう。
ゲームタイトル | CPU |
---|---|
Apex | Intel i5 3570Tおよび同等品 |
VAROLANT | Intel Core i5-9400F、AMD Ryzen 5 2600X |
フォートナイト | Intel Core i7-8700、AMD Ryzen 7 3700X |
マインクラフト | Intel Core i7-6500U、AMD A8-6600K |
ファイナルファンタジーXIV | Intel Core i7 3GHz以上 |
ドラゴンクエストX | Intel Core i3 2.0GHz相当以上 |
Monster Hunter World Iceborne Master Edition | Intel Core i5 9400F / AMD Ryzen 5 3600 |
クリエイター向けPCにおすすめのCPUの選び方
動画編集やイラスト制作、DTMなど、パソコンを使ってクリエイティブな活動をしたい人も多いでしょう。
用途やジャンルによって異なりますが、クリエイター向けのPCでは、ゲーミングPCと同等かそれ以上のCPUスペックが必要なことが多いです。目安として、Intel Core i5以上、もしくはAMD Ryzen 5以上を選ぶと安全です。
画像や音楽系の制作ソフトでは、グラフィックス(GPU)よりも、CPUのパフォーマンスが重要になります。また、動画制作・動画編集、3DCG制作でも、グラフィックボードの性能を十分に引き出すには、十分なCPUパワーを必要とします。
以下に用途別のおすすめCPUを挙げています。現在主流となっているCPUを記載していますが、同等かこれ以上の性能なら、そちらを選んでも問題ありません(上のCPU性能一覧表をチェックしてみてください)。
作業 | CPU | GPU |
---|---|---|
動画編集(HDまで) | Intel Core i5-12400 | GeForce RTX 3060 Ti |
動画編集(4K制作) | Intel Core i7-12700K | GeForce RTX 3080 |
3DCG、VFX | Intel Core i7-12700K | GeForce RTX 3080 Ti |
3DCAD | Intel Core i9-12900K | NVIDIA RTX A2000 |
イラスト制作 | Intel Core i3-12100F | 不要 |
写真加工、RAW現像 | Intel Core i7-12700K | GeForce RTX 3060 |
DTM、機械音声 | Intel Core i5-12400 | 不要 |
プログラミングに向いているCPUの選び方
プログラミング用のパソコンで必要なCPU性能はどのくらいでしょうか?結論からいえば、ゲーミング用やクリエイター用ほどの高スペックのCPUは必ずしも必要ではないです。初心者の学習用なら、Intel Core i3やAMD Ryzen 3程度のパワーでも十分です。
とはいえ、仕事でプログラミングをしたり、同時にいろいろな作業をするようになると、Core i5やCore i7クラスのCPUが必要になります。
プログラミングでの最適なPC選びについては別の記事でまとめているので、こちらもチェックしてみてください。
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CPUの4大性能指標!さらにこだわりたい人向け
では、自分にあうゲーミングPCを選ぶ上で、どんなCPUにすれば良いのでしょうか?
まずはCPUの性能を決める4つの指標を押さえます。というより、この4つだけ覚えて、自身で比較できるようになれば十分マニアックですので、大丈夫です。
コア数
最も重要な性能指標はコア数です。
コアというのは、CPUの一部であり、処理を行う回路が集約されているものです。
これが多ければ多いほど、並列的にいろいろな処理を同時に行うことができるため、各コアの性能が同じでも、コア数が多いほどCPUの処理性能は高いものになります。
多くのソフトウェア(もちろんゲームも!)は、こうした複数のコア(マルチコア)に対応しています。
マルチコアの処理に対応しているソフトでは、コア数が多いCPUは高速に処理することが可能になります。
特に動画編集、エンコードでは、並列処理が非常に重要になります。マルチコアCPU出なければ、並列処理が全くできず、処理の完了にとても時間がかかるためです。
クロック周波数
コア数と並んで重要性が高いのがクロック周波数(動作周波数、クロック数とも)です。
クロック周波数は時間あたりに何回計算できるかを示した数値です。CPU内部で、計算の歩調を合わせるためにクロック(時計)があり、一定周期で「脈を打っています」。そのクロックに合わせて演算を行っているので、一定周期の脈であるクロック周波数は高ければ高いほど、処理速度がはやいということになります。
例えば、1GHzのCPUが一秒間に10億回の命令を実行するなら、3GHzのCPUでは、一秒間に30億回の命令を実行します。これは、かなり単純化していて正確ではないのですが、大体このくらいです。
クロック周波数が処理能力に直結するのは間違いないため、やりたいゲームや使いたいソフトの推奨スペックにあったCPUを搭載しているか、確認した方が良いでしょう。
もっと知りたい方へ
IntelのCPUについてるターボブーストとは?
インテルCPUには、負荷のかかる作業を行う時に、CPUのクロック周波数を一時的に大きくするターボブーストという機能があります。
ターボブーストでは、負荷のかかった時だけ周波数を上げる仕組みのため、常にターボブースト時の性能が発揮されるわけではありません。それに、いつも高いクロック周波数でCPUが動作すると、放熱が効率的にできなかったり、PC全体の消費電力が大きくなってしまいます。必要な時にだけ、高い処理能力を得られる仕組みがターボブーストですね。
ターボブースト時のクロック周波数もきちんと仕様書に明記されています。
高負荷な動作が求められる最近のゲームでは、ターボブースト時のクロックが重要になることが多いと思います。したがって、定格のクロック周波数だけではなく、ターボブーストも確認してきたいところです。
キャッシュ
キャッシュとは、CPUのなかにあるメモリ(記憶するところ)のことで、CPUと各パーツを結んでいるバスとのやりとりを一時的に保存しておく役割があります。
メモリといえば、細長いPCパーツ「物理メモリ(RAM、メインメモリと言います)」を思い描く方も多いと思います。一方この「キャッシュメモリ」は、CPU内部に存在していて、処理で使うデータを一時的に保存しておくためのものです。
CPUとメインメモリは頻繁にデータのやり取りを行なっていますが、一部のデータをキャッシュしておくことで、物理メモリにいちいちデータを取りに行かなくてもいいようになっています。命令のたびにRAMにアクセスしようとすると、すごく時間がかかることになりますからね。
したがって、キャッシュは、その大きさが大きければ大きいほど、CPUの処理性能も上昇することになるのです。
TDP
処理性能とは関係がない性能指標として、TDPというものがあります。
TDP(Thermal Design Power)は「熱設計電力」のことで、そのPCパーツがどれくらいの熱を放出するか、またどれくらいの消費電力を要求するかの数値です。簡単に言ってしまえば、最大放熱量を指します。
最近発売されたCPU、Intel Core i9-9900KのTDPは 95Wですが、これは95Wの消費電力に耐える電源と、発熱量に耐える冷却システムが必要と解釈できます。100Wの一般的な白熱電球よりも少し小さいくらいの消費電力なのですね。正確には、TDPの数値と消費電力は一致しませんが、フルでCPUを使っている時にはほとんど近い値になります。PCを購入する際も、TDPを消費電力の目安として考えて良いでしょう。
Intelサイトのキャプチャ Core i9 9900Kのスペック表の一部
まとめ
CPUとはどんなものか、CPUの性能を決める4大指標をご説明しました。
これらの指標だけを押さえておけば、ゲーミングPCの購入時にCPU選びで困ることはないはずです。
ぜひ、いろいろなCPUをみて比べてみてください!