PCの基礎知識

猛暑の2020夏の熱対策に!ゲーミングPCの水冷の必要性とコスパを検討

ゲーミングPCを買ったり組み立てたりするときに「冷却性能」が気になりませんか。
よくあるのは次のような疑問。

水冷がいいって聞くけど、実際どうなんだろ・・・
BTOパソコンで水冷オプションあるけど選んだほうがいいの?

最近は夏も熱くて、熱暴走を起こさないか心配ですよね。
今回はゲーミングPCで水冷にする必要性と実務的なコストパフォーマンスを検討してみます。

結論としては、
簡易水冷ならメリット重視して選ばないとコスパ悪いかも。ダブル水冷などの高機能モデルなら予算がある人におすすめ」となります。
以下、解説です。

 

そもそもなぜ「冷却」が必要か

ゲーミング用のパソコンでなぜそんなに冷却にこだわる必要があるのでしょうか。
答えは主に2つ。

  • PC(とパーツ)の寿命を伸ばすため
  • オーバークロックなどのカスタマイズをするため

オーバークロックをするような上級者の場合にはもちろん冷却は重要です。

問題は1点目の「寿命」に関してです。

最近のパソコンは極端に熱くなったとしても壊れないようなちゃんとした設計のパーツを使用しているため、簡単にはおしゃかになりません。
とはいえ、コンデンサーなどの熱に弱いパーツを沢山使っているのは変わらないので、熱の発生は少しずつパソコンにダメージを与えていきます
そしてその結果、故障時期が早まることに。

 

空冷と水冷

そんな感じで、ゲーミングPCの冷却性能は重要です。
冷却システムには2つの種類があります。
「空冷」「水冷」です。

 

空冷

CPUやGPUが発生させる熱をヒートシンクに伝え、ヒートシンクに付けられた冷却ファンで熱を空気に逃がす構造。
冷却ファンが冷たい空気を吸ってヒートシンクにぶち当てることで、空気中に熱が伝導していき熱を逃してあげます。

PC全体でみると、大きな空気の流れに熱を乗せて冷やしているイメージ。
PC内部のエアフローが重要になるわけです。

 

水冷

Intel

CPUやGPUに水冷ユニットを装着し、その中を冷却液(クーラント液)が流れることでパーツから出た熱を吸収します。
そして、冷却液をポンプを使ってラジエーターに移動させ、そこからファンを通じて空気中に熱を放出させます。
その後、冷却液はパーツに戻っていきます。
水冷システムはこのプロセスを繰り返すことでパーツを冷やします。

重要なのは熱をCPUのすぐそばではなく、外部まで移動させて逃していること。
イメージは、冷却液で熱を外まで運んでいる感じです。

水冷は空冷よりも冷却効率が高いことが知られています。

 

水冷の効果

静音性

ハイエンド構成では、空冷と比べると水冷のほうが静音を実現できるとされています。

理由は「水冷のほうが冷却能力が高いから」。
一般に、ファンが大きい方がより高い冷却効果をもたらします。
そして同じ回転数だとより大きなファンの方が効果的にCPUを冷やすので、静音性が高くなります。

しかし空冷の場合、ファンの大きさには構造的に限界があります。
一般に120mmが人気ですが、最大でもせいぜい160mmくらいまでが限界でしょう。
ハイエンド機の高負荷下では、ファンが小さいとそれだけ高速回転が必要になり、その分音もうるさくなりがち。

一方、水冷は、360mmや480mmなど、複数のファンを連結させた大きなラジエータを装備することもできます。
かなり大きな冷却システムを作ることができ、高負荷下での冷却力も落ちにくいという特徴があります。
大きいファンを使ったほうが冷却性能が高まるので、結果的により静かな環境を作ることができるというわけですね。

 

パーツ性能の向上

パーツの性能が向上するというよりも、「本来持っているパーツの性能を活かすことができる」といったほうが正しいですね。

空冷よりも水冷のほうが冷却性能が高いのは間違いありません(後述の簡易水冷を除く)。
なので、高負荷時のCPUやGPUの温度を低く保つことができるので、結果的に高い性能を発揮させることができるわけです。

空冷はCPUやGPUのすぐ側に熱を排熱するのでPC内部に熱がこもりがちです。
ですが水冷はパーツから熱を外部まで「運搬」して放出するので、PC内部の温度への影響が小さくなります。
熱に敏感な電源装置などへの影響も抑えることができるので、結果としてPC全体の寿命を伸ばすことにもつながるのです!

 

室温の影響をうけにくい

空冷であれば、PC内部のエアフローをちゃんと考えることで、外部からの空気の流入と流出を設計しています。
なので、室温の影響を直に受けてしまいます。
猛暑日など、暑い室温ではCPUなどのパーツ温度は上昇しがち
冷やすための空気が熱いとね・・・

一方、水冷はエアフローによる冷却ではなく冷却用のラジエーターによるものです。
ラジエーターは大きいのを選ぶことができ、冷却能力が元から高いのが特徴です。
なので(室温による影響も無くはないですが)空冷の場合よりも室温の影響を抑えることができます。

 

PC内部がスッキリ

水冷システムにすればCPUにつけるドでかいクーラーが不要になり、すっきりした見た目に。

 

ITMedia

 

ホコリの侵入を抑える

水冷にすることで、内部のエアフローをあまり考慮しなくてもよくなります。
つまり、外から余分な空気を入れる必要がなくなります

そのため、外部のホコリを吸引することが少なくなり、ホコリが原因の故障リスクを抑えることができます。

 

水冷にするデメリット

「万能感」あふれる水冷ですが、ゲーミングPCで水冷を導入するデメリットもあるので気にしておきたいところ。

 

高価

やっぱり水冷は高いです…。

BTOパソコンで水冷モデルを選択する場合、同じ構成で空冷クーラーよりも1〜3万円ほど高くなるイメージです。

また、自作組み立ての場合には、水冷を付けられるケースは限定されます。
大きいか特殊な形のケースが必要になり、その場合も高価になりがちです。
より高性能な冷却力を求めて、ラジエータサイズの大きな水冷を搭載しようものなら、数万円単位の追加出費です・・・

 

故障リスク

水冷は一定確率で故障し、内部の冷却液が漏れ出すという悲惨な事故をおこすことがあります。
初期不良が多いので、全体としてはそこまで高い故障率ではありません。
過度の心配は不要かと思います。

もちろん空冷でも故障するときは故障しますが、水冷のほうが故障したときの派生リスクが大きいのです…

 

保守性

本格的な水冷は使っていれば中の冷却液がだんだんと目減りしていき、定期的に交換・補充することが推奨されています。
そういった意味では保守性が若干落ちます。

また、水冷システムによっては、グラボを変えると新しいグラボには冷却キットを装着できないこともあります。
将来的にパーツを変えたい場合には注意が必要です!

 

簡易水冷はコスパが悪い?

一般に水冷といった場合のシステムを「本格的な水冷」とするなら、ゲーミングPCをBTOで購入したときについてくる水冷システムは「簡易水冷」と呼ばれるものです。
簡易水冷の方が小さなスペースしか使わない(冷却液タンクが無い)ですが、一方で冷却性能は本格的な水冷よりも劣ります。
しかも、BTOで付いてくる水冷のラジエータはサイズが小さいことも。
なので、空冷と比較したときでさえ、簡易水冷は冷却性能・静音性能で負けちゃうことがあります。

そうした簡易水冷だと、追加でかけた金額に見合うようなコストパフォーマンスは出せないこともあります。

 

ゲーミングPCとダブル水冷

水冷システムのパソコンを組み立てるとなると従来はCPUとGPUのそれぞれに水冷ユニットをつけ、それぞれ別のラジエータに繋げて冷却していました。
(そもそもCPUにしか水冷装置を付けない場合も多いですが)
とはいえ、2つのラジエータを設置するとなると、必然的にケースが大型化してしまいます。
その分高い投資が必要になっていました。

そんな中、「ダブル水冷」というのが登場しています。
ダブル水冷はひとつのラジエーターにCPUとGPUの双方から冷却液を送り込み冷却する方法

ダブル水冷はいまのところマウスコンピュータの「G-Tune」シリーズの一部ハイエンドモデルで利用可能なようですよ。

 

ダブル水冷のメリット

 

G-Tune

管理人の経験から、ダブル水冷のメリット必要性について考えてみました。

ダブル水冷にすることで得られるメリットは以下の2点。

  • PC全体の静音性が向上
  • ケース内スペースを広く活用できる

ひとつめの静音性についてはいうまでもないですが、CPUとGPUのふたつからファンを減らして一箇所のラジエーターに集約することで冷却性能の効率化が図れるということです。
冷却力が上がると同時にファンの騒音を減らすことができ、静音性も向上しますね。

また、2点目はCPU・GPUを冷やすための外部からのエアフローを考えなくてすむこと。
エアフローの制限が少なくなり、追加的にパーツを入れたりケーブル配線の自由度が上がります。

 

ダブル水冷のコスパ

現在BTOメーカから出ている「ダブル水冷」はどれも最高級のCPUとグラボを搭載したハイエンドモデル機となっていますね。

一般に水冷のラジエータは240mm以上ならかなり優れた冷却性能を発揮すると言われています。
G-Tuneのダブル水冷モデルは最上位モデルになると360mmのラジエータを搭載しているので冷却性能は抜群。

ダブル水冷を選択できるモデルはどれも上位モデルになるため、高負荷時の発熱はかなり大きくなり、パソコンへの負担は大きいものです。
ダブル水冷で効率的に冷却することで、性能を安定させるだけではなく、故障リスクを抑えることにも繫がります。
予算的に余裕があるなら選ばないという選択肢はなさそうです。

 

まとめ

ゲーミングPCの水冷について検討してきました。
総括すると、水冷のメリットは大きいものの、追加出費などの負の面をあわせて導入を考えたほうがよさそう。

なので、予算が限られているときには無理に水冷にこだわる必要性はないと思います。

逆に予算に余裕があれば「ダブル冷却」など確かな冷却性能をもつモデルを積極的に選択したいですね。

 

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